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成長期のケガ・スポーツ障害を予防するための対策とは?

2022.12.08

子供の成長期では、身長がぐんぐんと伸びていく時期であると同時に、疲労骨折などの「スポーツ障害」のリスクも高まる傾向があります。そのため、スポーツをするお子さんを持つ保護者は、注意を払いながらスポーツと向き合うお子さんをサポートしていくことが大切です。では、どのような予防・対策をすれば、スポーツ障害のリスクを抑えられるのでしょうか。

今回は、成長期の子供によく見られるスポーツ障害の種類や、それを予防するための対策方法などを解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

成長期の子供のスポーツ障害には特に注意が必要!

スポーツをしていると、外部から加わる力によって捻挫や骨折などのケガ(スポーツ外傷)や、小さな損傷の繰り返しに伴って慢性的に発症する「スポーツ障害」を招く可能性が高まります。たとえば、疲労骨折や野球肩などが慢性的に発症するスポーツ障害の代表例として挙げられますが、これらは幅広いスポーツに共通して、刺激を受け続けることによって発生する可能性が高まります。

しかし、その刺激も生理的な許容範囲であれば、筋肉や神経、血管といった器官は発達しながら、運動への適応力として強化されます。ただし、成長期と呼ばれる時期は、与えられる刺激への許容範囲が狭い時期としても知られています。そのため、平均的に身長の伸びが最も大きな年齢とされる「女子は10歳前後」「男子は12歳前後」では、ケガや障害のリスクが高くなることが考えられます。

身長が勢いよく伸びていく時期は、骨がもろく折れやすい時期でもあり、大きな負荷がかかるトレーニングによって骨の成長にかかわる「骨端軟骨(こったんなんこつ)」をつぶしてしまう可能性もあります。この骨端軟骨とは、成長軟骨とも呼ばれるほど成長に欠かせないものであり、骨の成長にも大きな影響を与えるため、子供の成長を妨げてしまわないように注意しなければなりません。

(出典:政府統計の総合窓口「学校保健統計調査 年次統計 年齢別 平均身長・平均体重・平均座高の推移」https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003147022 )

成長期の子供に多いスポーツ障害とは?

ここからは、成長期の子供に多いスポーツ障害について見ていきましょう。なお、以下のいずれのスポーツ障害も、発症した場合は、しっかりと体の安静期間を設けることが大切です。

━「野球肩」とは

一般的な肩の障害としては、肩関節の脱臼や亜脱臼(あだっきゅう)などが多い傾向にありますが、これらは高校生以上に多くみられます。また、中学生以下の成長期の子供に多いのは、ピッチャーに多い「リトルリーガーズショルダー(上腕骨近位骨端線離開)」という肩痛ですが、これが一般的に「野球肩」と呼ばれるスポーツ障害です。

特にリトルリーグで用いられる硬式ボールは軟式ボールよりも重量がありますので、投球動作の繰り返しによって腕が引っ張られたり、ねじられたりすることによって、子供の柔らかい骨にも大きな負担がかかります。そのため、上腕部の肩関節近くに位置する骨端軟骨に障害が起こり、ひどい場合には野球肩を招いてしまうのです。

野球肩は、レントゲン写真で骨端線と呼ばれる成長軟骨板の離開がどの程度なのかを確認することで、症状の重さを判断できます。このときの離開の程度によっては、数ヶ月間の安静も必要になる場合もあります。

━主に投球動作で生じやすい「野球肘」とは

投球によって生じる肘の痛みの全般を「野球肘」と呼びます。野球肘もピッチャーに多く見られ、全力で投げることによって肘に負担がかかり、軟骨や靭帯に損傷が起こることが主な原因として挙げられます。この野球肘を無視してプレーし続けると、どんどん症状が悪化し、選手生命を奪うことにもなりかねません。そのため、肘関節の動きが悪い子供は投球を控え、速やかに整形外科の診察を受ける必要があります。

━成長痛とも呼ばれる膝の痛み「オスグッド病」とは

膝と足首の間にある太い脛骨(けいこつ)が、前の筋肉に長く引っ張られることで剥離し、痛みが生じます。たとえば、サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボールなどの膝に負担がかかりやすいスポーツをしている子供が発症するケースが多く見られます。また、スポーツをしていない子供でも身長が伸びる時期に生じるケースもあります。

━腰の疲労骨折「腰椎分離症(ようついぶんりしょう)」とは

成長期の子供の骨は柔らかいため、背中を反ったり上半身をひねったりする動作の繰り返しによって腰の骨が圧迫され、疲労骨折を起こしてしまいます。最初のうちは、腰をひねったときに痛みを感じる程度ですが、徐々に痛みが増していくため、「少しの痛みだから」と無視してはいけません。少しでも子供が痛みを感じていたら、整形外科の診察を受けることが大切です。

━かかとの痛み「シーバー病」とは

10歳~13歳の男児に多くみられる障害です。前述の通り、成長期の子供の骨は柔らかく、まだ成熟していません。そのため、足の裏の筋肉やアキレス腱といった、踵に関係する筋肉や腱が引っ張られる力によって、踵の後方に痛みが生じることがあります。その痛みが、スポーツの後に少し感じる程度であれば、シーバー病の初期段階と考えられますので、踵にクッションのあるシューズを着用してスポーツをすることも可能です。しかし、踵への負担が増すとスポーツ中にも痛みが出てしまうほど重症化することもあるため、安静期間を設けることが好ましいでしょう。

成長期のスポーツ障害・外傷を予防するためには

ここまでご紹介したように、成長期の子供はさまざまなスポーツ障害のリスクを抱えていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。子供の発育スピードには個人差があるため、一人ひとりの発育状況をよく観察し、見極めながら指導することが大切になります。

とはいえ、どれだけ注意深く子供を観察していても、スポーツ障害・外傷を完璧に防ぐことはできません。たとえ小まめなコミュニケーションを心がけていても、身体の異変を察知することは簡単ではないからです。だからこそ、子供がケガをしてしまったときの向き合い方についても、事前にしっかりと考えておくことが大切になります。

「あまり痛みを訴えないから放っておいて大丈夫だろう」と放置していると、痛みが強くなり始めた頃には関節の変形や骨の分離が起きてしまっているというケースも否めません。そのような事態を避けるためにも、早めに整形外科などの医療機関を受診することをおすすめします。また、スポーツ障害の再発を予防するために、体幹トレーニングによってインナーマッスルを鍛えて骨にかかる負担を軽減したり、日々のストレッチで身体の可動域を広げたりすることも効果的です。

 

スポーツ障害のリスクを踏まえて「スポーツの楽しさ」を子供と共有しましょう!

今回は、成長期のスポーツ障害の種類や予防法などをご紹介しました。慢性的に発症するスポーツ障害は、小さな障害の積み重ねによって生じます。そのため、子供を注意深く観察し、身体の異変に素早く察知できるようにすることが大切です。しかし、子供が感じている痛みを察知することは簡単ではありません。だからこそ、少しでも痛みや違和感を共有できるようにコミュニケーションを図ることに加え、ケガをしたときの対策について知っておくことも重要になります。

ただし、スポーツ障害のリスクを意識するあまり、過保護になってしまうと子供からスポーツの楽しみを奪ってしまう可能性もあります。重要なのは、ウォーミングアップやクールダウン、体幹トレーニング、食事、睡眠などによってスポーツ障害を予防しながら、バランス良くスポーツと向き合っていくことです。それには、保護者や指導者の日ごろからのサポートが欠かせません。ぜひ、スポーツ障害のリスクや対策方法を踏まえて、お子さんと「スポーツの楽しさ」を共有してみてはいかがでしょうか。